フランクはフランス音楽に分類されるが、内容的にはバッハの影響が強く重層的で入り組んでいて、フランスとドイツの中間的な音楽に聴こえる。フランクのヴァイオリンソナタも最終楽章にカノンを使ったユニークさがあるが、これほど重厚ではない。ここには、ドビュッシーやラベルの煌びやかさはなく、全楽器が旋律を歌い互いに絡み合う充実感にあふれた立体的な音楽がある。ズスケはベルリン弦楽四重奏団で幾多の名演奏を残したが、このメンバーのゲバントハウス弦楽四重奏団も実にレベルが高く素晴らしい。ズスケのヴァイオリンがトップレベルであることは当然として、ヴィオラやチェロの活躍も際立っている。さすがに低弦を特徴とし、歴代名チェリストが在籍したゲバントハウス管弦楽団のメンバーである。作曲法も各パートがこれほどに活用される弦楽四重奏曲は珍しい。この地味で深みのある音楽は室内楽を聴きこんだ方々にお薦めである。独墺系の名盤ばかりの中にあって、この弦楽四重奏曲はズスケ自らが望んで録音したとのことである。アルバンベルク四重奏団が弾けばダイナミック過ぎてやかましくなるだろうと想像されるところも、ズスケは程よいロマン性で盛り上げつつも抑制が効いていて格調高い。ズスケが残した唯一のロマン派四重奏曲として貴重この上ない。